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日誌

「塔」をつくる

 

皆さん、「塔」あるいは「タワー」と言われてどんなものを想像されますか?

 

 

エッフェル塔、バベルの塔、ピサの斜塔、東京タワー、名古屋テレビ塔、太陽の塔…。

 

 

世界にはいろいろな「塔(タワー)」がありますが、学びの森にもこの度いろんな塔ができました。

 

 

 

 

…え、どういうこと…?と思われた方が圧倒的多数かと思います。

 

 

学びの森の桜井先生の「ゼミ」の時間では、文学作品の精読フォーラムなどのイベントの企画以外にも、作文だったり絵だったり自分の好きなことを紹介するプレゼンテーションだったりと、いろんなものを創作することがあります。

 

 

「塔」をつくったのもその一環で、ゼミに参加する生徒たちが一人1つ(人によっては2つ)ずつ自分のつくりたい「塔」を紙に描き出し、プレゼンすることになりました。

 

 

今日はその作品をご紹介します。

 

 

 

 

ひとつめはこちら。

 

 

 

 

縄文時代から平成までの歴史を塔にし、改元前の今の日本を表したこちらの塔。日本が積み重ねてきた歴史の末にある今の「平成」という時代、それが改元という形で終わりかけていることを塔の先端部分で表したそうです。個人的には、塔のビジュアルが地図のような、はたまた地層のように表現されていることが歴史の蓄積を感じさせて印象深かったです。

 

 

 

 

2つめ。

 

 

 

 

学びの森を塔にしたら?というテーマで考えられたこちらの塔は、塔のみならず広大な敷地を有する学びの森。ひとつのテーブルを囲んでラウンドテーブルや出会い場語り場というイベントが出来るようにしたというアイディアやいつでも運動ができるように設置した運動場などのアイディアから、普段学びの森で毎日生活している生徒たちのリアルな感覚を感じました。

 

 

 

 

3つめ。

 

 

 

 

左側が塔のイメージで、右側がその移動のために使うエレベーターのイメージ図だそう。汚染され人が住めなくなった地上、そこから人々は逃げるように住まいを上へ上へと移していった、という設定です。地球の表面と平行に沿うように設置されたのが住居スペース、それを支える管のようなものがそこに向かうための光速エレベーターだそうです。しかし光の速さで物質が移動することが可能なのか?可能であったとしてもその物質はどうなってしまうのか?という疑問も浮かんできました。

 

 

 

 

4つめ。

 

 

 

 

こちらは先ほどまでに紹介した地上から上↑へ向かう塔のアイディアとは逆、海面から深海の海底へ、下↓に向かうアイディアの塔。海の中に住む生き物を見る水族館のようなイメージだそうです。この発想の原点を尋ねると「塔の中に何か見るものを作るというアイディアが思い浮かばないと思ったので、見るものが外にあるところに塔を作った」とのこと。塔という建物の特徴と、塔の「外」に塔に上る(下る?)目的を設定しようとしたアイディアが重なったところにコンセプトを設定しているところが企画として印象的です。

 

 

 

 

5つめ。

 

 

 

 

本屋に直売所、フードコートに映画館、キッズコーナー、イベントスペース、会議室にスタジオや劇場…という文化的な施設が一挙に集合したこの塔、その名も「市民のための塔(笑)」。京都市から学びの森のある亀岡市に通う生徒が、亀岡で音楽をやろうと思ったら演奏できるスペースがない、という経験から着想を得た、田舎の街のための文化複合施設。亀岡市民のタナカとしては、こんなんあったらええな~と思う一方で、一見文化的に見えないところにこぼれ落ちている文化の蓄積を見つけ出すことや、それに出会いに都会に出かけていくことの楽しさも好きなのでいろいろと考えさせられました。いわゆる「ハコモノ」行政に繋がらないか?という懸念も挙がっていました。

 

 

 

 

6つめ。

 

 

 

 

こちらは私タナカ発案の塔その1「自己の塔」です。過去→現在→未来という時間の流れとともに自己も直線的に形成され成長していくと思いがちだけれど、それって本当にそうなの?もっと歪んだりうねったり曲がったりしてていいんじゃないの?と思ったところから考えついた塔です。人生のいろんなタイミングで本に出会えるようなイメージで、踊り場に雑多な本をたくさん配置しました。思いついた当時はいろいろ悩んでいたからかこんな感じになったのですが、描いてる途中から嫌になってきました。そこで路線を変更し新しく描いたのが下の塔です。

 

 

 

 

7つめ。

 

 

 

 

路線を変更した結果、タナカ発案その2の塔がこちら。カレーに目がない私のカレーを愛する気持ちをぶちこんだ、その名も「華麗なるカレーの塔」です。全部で9カ所あるカレー屋さんで好きな種類のカレーを食べることができる、カレーファン垂涎の塔。描いてる途中もめちゃくちゃ楽しかったのが先ほどとの大きな違いでした。

 

 

 

 

以上が、学びの森の生徒スタッフ発案の「塔」(一部)です。

 

 

 

 

桜井先生のゼミの時間に入れる時は、私自身はスタッフとしての意識で参加するよりも、みんなと同じように、いち個人として本気で参加するようにしています。(資料の用意や生徒のフォロー等、もちろんすべき仕事がある場合はそれに取り組みます)

 

 

その方が、みんながどう考えてその結論に至ったのか、そんな自分をどう受けとめているのか、その結論をどうやって人に説明するのか、人からの反応にどう応えるのか、といったことをキャッチしやすくなるように感じるからです。

 

 

 

 

この「塔」を作る授業でも、ひとりの参加者として本気で「塔」について考え自分の「塔」を設計してみることで、いろいろと感じることがありました。

 

 

 

 

私タナカがスタッフとして、このゼミを「学びの森」という教育の場で行う意味や理由を言語化するとしたら、以下のようになります。

 

 

塔という建物の特徴を考えることは「与えられた情報の持つ特徴を考えること」であり、自分が創作する塔のコンセプト決定や設計には「特徴を生かせる設定を考えること」が要求される。そしてそれを誰かに伝えるためには、理解納得してもらうためには工夫が必要である。

 

 

そしてそれらは、「塔」というテーマを考えるのみに限らず、論文などの文章を執筆する際、プレゼンやディスカッションなどの誰かに自分のアイディアを伝える際、といったいろんな局面で必要になることだろう。

 

 

 

 

この結論に至るまでに、いち参加者としての経験と実感があるかないかは、その結論に対して「腑に落ちる」感覚があるかどうかをめちゃくちゃ左右すると思っています。

 

 

「『塔』って下から上に上ってくもんやろ?それってめっちゃ直線的な動きよなぁ」

「自己形成の流れもわりと直線的に語られがちやけど普通そんなうまくいく?」

「あっ、この特徴組み合わせたら『塔』と『自己』の既存の概念に働きかけられる何かができるんちゃうやろか」

「ひたすら好きなもんについて書く(描く)の楽し!」

「クレヨンで画用紙に絵描いてるときの感覚好きやわぁ」

「カレーやから黄色にした方がええやろか」

「どうしたら『おもろい』と思ってもらえるやろか」

 

 

などなど、頭を使ってものを考え、手を動かして何かを創り出す時の楽しさ。それをどうしたら魅力的に伝えられるだろうという迷い。皆にそれを発表する時のドキドキ。飛んでくる質問にどう答えようかという試行錯誤。

 

 

 

 

自分の身体を通して出てきた思考や言葉は、自分に対してかなり説得力を持ちます。(と思っているのですが、いかがでしょう?)

 

 

生徒が取り組む「学び」全てを自分自身がいち参加者として経験できるはずはありません。が、こういった経験をひとつでも多く自分の中に持つことは、想像力を鍛えます。その想像力が、生徒の「学び」を捉える時、意味を考える時、言語化する時に結構効いてくる気がするのです。

 

 

 

 

そんなことを考えさせられた、桜井先生のゼミの時間。

 

 

私がいち参加者として参加したゼミの様子、今後もまたお伝えしたいと思います。